油面を上げる?

今日は質問への回答を御題にしてみました。
既出の複数の項目に跨ったいい質問なのでここで取り上げさせて頂きました。
このブログの利用方法の参考になるかと思います。

「購入して半年ぐらいで里山メインのパノラマ数回行きました。
動きはスムーズで申し分ないのですが、どうも奥の踏ん張りが強すぎて2cmほどストロークを使いきれていません。オイルを少し抜いて油面を下げてもダンパーの機能上問題はないでしょうか?もちろん少しずつ抜いていくつもりです。体重は60キロでエア80PSIサグは22mm、リバウンド4クリック締め、コンプ3クリックです。」

08FLOAT RLCをお使いとのこと。

まずは油面を上げる(下げる)ことの意味についてご説明いたします。

“油面”とは、潤滑・減衰・冷却のために入れられたオイルの上面になります。
“密閉”されたフロントフォークでは油面とトップキャップとの間にエアスプリングの役目をする“空間”ができます。
フォークがストロークするとその“空間”が圧縮されて“バネ”の役目をするというわけです。

針がついていないおもちゃの注射器、その針がついていない穴をふさいで圧縮してみましょう。

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空気を圧縮させようとすると、初めは簡単に圧縮できますが、ある程度圧縮すると人間の手ぐらいの力ではそれ以上圧縮できなくなります。これが踏ん張り感の正体です。

半分くらいまでは簡単に圧縮できます。
容量が大きければ半分の値が大きくなります。
同じ直径のインナーチューブなら、その半分の値は長さにおきかえることができます。

つまり

油面を下げれば“空間”の容量が大きくなるため“バネ”は柔らかくなり、
踏ん張り感はストロークの後半に移行します。

油面を上げれば“空間”の容量は小さくなるため“バネ”は硬くなり、
踏ん張り感はストロークの前半に移行します。

この性質を利用して、「油面を上げる」「油面を下げる」ことによって踏ん張り感を調節するわけです。

しかし以前にも申し上げていますが

FOXのフロントフォークは油面の影響をうけません。

オイルシールを持っていませんから、空気を完全密閉することができません。
油面を上げるとダストシールとインナーチューブの間からオイルが吹き出ます。

その代わり密閉されていないため、ボトムケース内部の空気が標高差による大気圧の変化に柔軟に対応できるようになっています。FOXのフロントフォークが山頂でも、麓でも、いつも同じような感覚で動く秘密なのです。
(メイン気室のエアスプリングは高度による圧力変化の影響を受けます。)

FOXのフォーク、油面では踏ん張り感が調整できないことはご理解いただけたと思います。


「体重は60キロでエア80PSIサグは22mm」

60キロで80PSI、ハードテイルもしくはリアが固めの設定。
もしくは100mm-120mmにストロークを縮められているのでしょう。

140mmであるのなら、フロントのサグは21mm-35mmのレンジに入っていれば適正です。
22mmは随分硬めの設定。30mmあたりで一度走行してみてください。
リアサス付なら、バランスの関係で前後のサグ設定を一からやり直す必要があると思います。

勘違いされている方が多いようですが、
「バネレートが高い、空気圧が高い」。というのは速いことの証明ではありません。
「硬めのサス」という表現は圧縮側減衰(コンプレッション)が硬め(強め)であるということなのです。

「なぜサグを落とすという発想にならないのか?」
ペダリングによるロス、ピッチングが大きくなることを避けたいのなら、
初期のコンプレッションを強くすれば解決します。
多分、以前に油面の調整で劇的な効果を体験されているのだと推察いたします。

「2cmほど使い切れていません」
いつもストロークを使い切る必要はありません。

以上回答させて頂きましたが、過去ログを読んでいる方にとっては全ての文章が“繰り返し”に見えたかと思います。これが実は盲点なのです。
実際にはこれらの問題は別々の項目に分かれて記述されているため、それらの知識を一つ一つ関連付けていくような作業が必要となります。この項目はその関連づけをする作業についての実例・実践編となっています。
単なる知識の破片たちが結びついて、初めてその知識が“生きたもの”に変わっていきます。

繰り返しと思われずにお付き合いくださいますよう、お願い致します。