シクロバイクかぁ

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技術の進歩には際限がありません。
初めて2015年の32シリーズに乗った時の感想は「何これ!」。振動が感じられないことに対する驚きとちょっとした違和感を覚えました。ユーザーさんによる、異なる表現で感心したのは「砂利道が怖くない」。巧みな表現だと思いました。2015年モデルのFOX、数年前とは全く違ったクォリティで衝撃を緩和することができています。
初めてMONDRAKERに乗った時、「登りにスキルはいらなくなった」と思いました。この感覚も昔ならば全く想像もできなかったレベルで実現されています。
30年余りという短い歴史の全てが、ライダーが習得すべきスキルをシステムに置き換えるための技術開発に充てられ、よりユーザーフレンドリーになってきた乗り物がMTBなのです。

1.5T、15QR、リアスルーアクスル、29インチ、27.5インチ、PF30、BB30。
これ位なら躊躇することなく記述できるほどに様々な新しい規格が生まれました。こうした技術の進歩によってMTBは快適かつ速いスピードでトレイルを走れるようになったことは間違いありません。ロードバイクもカーボンフレームや電子制御系のデバイスによって技術革新の恩恵に与っています。

シクロクロス、舗装路はロードよりも遅く、悪路においてはMTB程の走破性は望むことはできません。しかし間違いなくシクロクロスの静かなブームは続いています。

MTBやロードバイクよりもシンプルでリーズナブルなスポーツサイクル。シンプルであることが魅力の一つであることは間違いありません。ピストやシングルスピードのブームも、そのシンプルさが大きな魅力であったはずです。

ロードのブームによってドロップハンドルはスタンダードになり、購入する際の障壁ではなくなりました。(二十年以上前、MTBが一般の方に受け入れられた際、その大きな要因の一つにフラットバーがありました。)フロントサスペンションが発売される前のMTBはヘビーデューティなシクロバイクだったのです。それがリアサスまで採用され、結局完成した一つのジャンルになりました。技術の進歩によってMTBはシクロバイクから遠ざかっていき、ロードバイクは先鋭化することによって、やはりシクロバイクからの距離が離れていきました。ロードバイクとMTBの違いが大きくなり、その中間的なポジションにシクロバイクがうまく嵌った感じなのです。

リジットのMTBではシクロバイクの代わりにはなり得ません。ちゃんとした哲学を持ってカーボンリジットフォークを入れた、思い入れたっぷりな高額なマウンテンバイクであっても、一般のおばちゃんには『ばね(サスペンション)がついてないマウンテンバイク』と切って捨てられてしまいますから。(笑)おばちゃん目線で例えるのなら「ちょっと変わった自転車やね。」と言われなければダメなんです。

ロードでもなくMTBでもない、ちゃんとしたスキルを持っていないと速く走らせることができないバイク。過剰な技術革新を毅然とした態度で拒んだシンプルでストイックな正統派スポーツバイクがシクロバイクなのだと思います。

「サスペンションバイクしか作らない」と言っていたデイビット、2010年にシクロクロスに出場しました。彼は「古き良き時代」のマウンテンバイクレースを思い出したようです。商業化やプロフェッショナル化が進んだ現在のマウンテンバイクレース。それによって様々なメリットやデメリットが生まれました。昔のマウンテンバイクレース界にあったコミュニティや友愛の精神、正しい競争原理がシクロクロスレースには今も存在していることに感銘を受けたようです。またクイックな操舵性を生かして綺麗なラインを選択して走る楽しさは昔のマウンテンバイクと同じだという感想も述べていました。
サスペンションを広めたキーパソンの一人でもある彼がシクロバイクをリリースする、色々と考えさせられます。

冒頭の部分で触れた“ちょっとした違和感”の正体は『本当に全てのユーザーがここまでの性能を求めているのか?』といった種類のものでした。より快適な環境を実現するためには技術の進歩を否定することはできません。しかし常に価格と性能とのバランスに配慮することも重要であることを再認識した次第であります。